教科書

  ・電磁気学入門(培風館、2006年)

  ・物理学への誘い(大阪大学出版会、2002年)

解説書

  ・素粒子と原子核を見る(大阪大学出版会、2001年)

 

電磁気学入門

―クーロンの法則とビオ・サバールの法則を中心に―

―電磁気学―

私は結構長い間電磁気学を教えてきた。電磁気学は物理学の中でも最も完成した体系を持っている。良い本も多いので、今更と思ったが、物理を学んだことの無い学生に講義したことが経緯となってこの本を書く気になった。私に取って講義は結構難しい。良い講義にするには準備が必要だが、準備したからといって学生からみて良い講義にはなかなかならない様だ。多分学生が学びたいものと、私が学んでほしいものが違うのだろう。私自身学生の頃面白かった講義と、その後役にたった講義は必ずしも一致していない。理解した後であれば納得出来る論理の展開が、分からない内はしっくりこないのである。自分で本を書いても同じようなギャップがあるのではと思ったが、今の私の理解を伝える本を書きたいと考えた。この点はそれなりに達成できたと思う。

 

−場−

 この本は場の考え方を身につける様に書かれている。質点をあつかう力学と異なり、全空間に広がる場(電場、磁場)を扱う電磁気学では、任意の点で成立する微分方程式が中心の課題になる。すると、全ての物理量は空間の任意の点で定義できる密度を用いて書かれる必要があること、また微分を3次元空間で定義する必要があることが納得できる。高校までの電磁気学ではこのあたりが明確にされてない。この点は大学で電磁気学を習うときのポイントだと思うので、結構強調してある。実感できるようになるには時間がかかるが、意識して勉強すれば比較的たやすいと思う。

 

場が実体であることは、それがエネルギーを持つことを示すことが実感する上で近道だろう。古典力学では重力場の中で質点を移動させるときの仕事は位置エネルギー(ポテンシャル)となる。電場中に置かれた点荷電も力を受けるので、電荷の移動は仕事となる。よって電荷が分布している状態には位置エネルギーがあるいえる。ではそれは何処にあるのだろう。電荷分布によって生じた電場がエネルギー密度を与え、その全空間の積分が位置エネルギーに等しいことを導いている。つまり場の存在する空間にエネルギーが蓄えられている事が示される。ここの部分の証明は初学者には少し難しいが、分かり易く書いたつもりである。これで場がエネルギーを担う実体であることが実感できる。

 

−ベクトルと特殊相対論−

 もう一点力を入れているのはベクトルを理解することである。ベクトルは非常に有用で、本来単純な概念(空間に矢が実体として存在する程度を考えておけば良い)なのだが、数学的な道具立てを議論し始めるとこの単純性が頭から飛んでしまう。この本では非常に初歩的な事から書いてあるので、初心者用の本と思われるかも知れないが、4次元空間でのベクトルを見つけることが出来れば(大きさであるスカラーを定義できれば)、特殊相対論が理解出来てしまうことまでを書いた。エネルギーと質量の関係式( E=mc2 )は一見神秘的だが、ベクトルの大きさを求めているに過ぎないことを導いている。3次元空間では直感的に自明のベクトルとその大きさの関係を、4次元時空に拡張したときどう理解するかがポイントになる。

 

エネルギー、運動量、質量の関係は E2=p2c2+m2c4 p=0の場合に E=mc2 となる

 

なお本書には既に以下の2点の誤植が発見されている。もしこれ以外に気がついた人がいればメールしてください。

 

93頁上から4行目 |r-l|3 |r-l|4 の間違い

101頁下から4行目 z1 の添え字は z2の間違い

 

電磁気学入門(培風館ホームページ)

電磁気学入門(アマゾン)

 

 

物理学への誘い

 

この本は物理学の初歩を教えるとき、適当な本が無いという現実を議論している過程で大貫先生の強いリーダーシップの元書くことになった本である。私は195頁からの「原子から原子核・素粒子へ」の章を担当した。前期量子論を習う前の学生を読者に想定している訳だから、書き方が難しかった。少し変則だが、量子力学で考えると、粒子には同じ場所に存在できるか出来ないかで2つのタイプ(フェルミ粒子とボーズ粒子)が考えられることから話を始めた。次に同じ場所といったときその大きさを決めているものは何かの疑問を呈し、それが量子力学の導入につながることから説明している。その後は標準的な話題を取り上げている。

 

 

素粒子と原子核を見る

 

この本は現代物理学の中で、実験を伴う自然科学として最も基礎的な素粒子や原子核の分野での最近の発展を特に阪大理学部で行われている研究に焦点を当てて解説したものである。私は40頁からのダークマターの探索についての解説を担当した。この本が書かれたのが2001年であるが、その時は未だダークマターが宇宙の質量の主成分であるとの議論が大勢だったと思う。それから10年経って無いにも関わらず、今やダークエネルギーを主成分として語らなければならなくなった。しかしダークマターと異なり、その素性に関しては候補者すら居ない状況は変わっていない。どちらにしてもダークマターの探索がしばらく重要であることは変わりが無いであろう。