ラムダ・ハイパー核とハイペロン-核子相互作用

ハイペロンとラムダ・ハイパー核

single and double Lambda hypernuclei

まず「ラムダ・ハイパー核」というのは一般の人にとってはあまり聞き慣れない言葉でしょう。 非常に簡単に言えば「ラムダ・ハイパー核」は自然界に存在する通常の「原子核」にかなり性質がよく似た「もう一つの原子核」です。 また自然界に存在する通常の原子核と同様、「バリオン」と呼ばれる基本的な粒子が互いに引き合うことで多数集まったものです。

物質の基本的な構造について学んだことのある方は、物質が原子で出来ており、その原子が原子核と電子に分解でき、さらに原子核は陽子(p)と中性子(n)で構成されていることをご存知でしょう。


原子核と核力のモデル

Yukawa's meson-exchange model

通常の原子核やハイパー核は多数の粒子(=核子とハイペロン)が互いに力を及ぼしながら運動しているシステムです。 その性質を詳しく調べるというのは具体的にはどういうことでしょう。 その一つの答えは、このシステムを構成している粒子間の力(相互作用)の詳細について理解を深めるということです。

通常の原子核の研究でも、原子核を構成する核子の間に働く力(核力)がこれまで研究されてきました。 初期の研究で有名なものは「湯川の中間子モデル」です。 湯川博士は「核力」の強さと到達距離を説明するため、未知の粒子(後に発見されたパイ中間子)を導入しました。


ラムダ・ハイパー核とハイペロン-核子相互作用

SU(3) baryon decuplets

ところで、自然界には存在しないラムダ・ハイパー核の性質を詳しく調べるというのは、いったいどんな意味があるのだろうかという疑問を持つ方もいるかも知れません。 逆説的ですが、自然界に存在しない「原子核」だからこそ、私達の世界を作っている原子核をより深く理解するのに役立つのです。

通常の原子核の研究により、核力の詳細を再現するバリオンとメソンを元にした理論モデルが構築できるようになりました。 しかしながら、バリオンやメソンを構成するクォークとそのクォーク間の相互作用を記述する量子色力学(Quantum Chromo Dynamics, QCD)で核力を再現する理論はまだ発展の途上にあります。


研究グループの最近の成果

ラムダ・ハイパー核におけるスピン・軌道力の研究

gamma-ray from 13LC

原子核の性質や構造を決める重要な相互作用としてスピン・軌道力があることが知られており「魔法数」が生じる原因となっています。 我々のグループの研究により、このスピン・軌道力がラムダ・ハイパー核では通常の原子核に比べ非常に小さいことが分かりました。

中性子過剰ハイパー核の生成

experimental setup of J-PARC E10

ハイパー核研究の興味ある新たな分野の一つとして、中性子過剰ラムダ・ハイパー核の生成とその構造の研究があります。 我々のグループでは、J-PARC(大強度陽子加速器施設)にある 50 GeV シンクロトロン実験施設にて、これまでに生成されたことがない中性子過剰ハイパー核を生成する実験を実施します。

ハイパー核中でのラムダ・シグマ混合の研究

missing-mass spectum from J-PARC E10

ラムダ・ハイパー核で興味が持たれている現象にΛN-ΣN 混合という現象が あります。 我々のグループではこのΛN-ΣN 混合が、中性子過剰ハイパー核で顕著にな る可能性があると考え、中性子過剰ハイパー核の構造を詳しく調べます。

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