K中間子を直接原子核内に打ち込み、 反応で生成される状態を missing mass spectroscopy の方法で測定する。この方法でK中間子と原子核が どの様な状態を作るかが分かり、K中間子と原子核との相互作用を明らかに出来る。 米国ブルックヘーブン国立研究所(BNL)のAGSでは世界で最高強度のK中間子ビーム を得ることができ、それを水標的に当てて中性子を観測した 反応の 実験を行った(2001年)。この解析を進めてきた。中性子は名前のとおり電気的に中性 で、その計測は中々難しい。当初中性子スペクトルには膨大なバックグランドがあり、 標的周りのGe検出器でタグすることである程度除去でき、引力を示すスペクトルが 得られた。しかし、解析の進展で、この膨大なバックグランドがK中間子が飛行中に 崩壊する現象から来ていることを明らかに出来た。標的の後方に設置したドリフト チェンバーからの信号を利用することでかなり除去することが出来、当初から使って いたGe検出器と併用することでバックグランドをほとんど無視できるレベルにまで 落とすことが出来た。結果として当初から想定していたようにこの反応がK中間子核 の観測に有効であることを示すことが出来た。 この結果K中間子との系で約90MeVの束縛領域に かなりはっきりしたピークと約130MeVの領域に弱いがバックグランドを超える レベルでピーク構造が見えてきた。 この結果はK中間子原子からX線の観測で指摘された約200MeVの深さのポテンシャル に対応している。200MeVという今までの常識を大きく超える強い引力が働いているこ とが明らかになった。2003年10月米国バージニアのJlabで開かれたHYP03国際会議で発表された。